第3回ディレクターの証言
~現場のウラ側について~
皆様はじめまして。
「逆転検事1&2 御剣セレクション」の開発ディレクター&企画を担当しました、坂井暁と申します。
検事シリーズの移植を心待ちにしていた皆様、長らくお待たせしました。
なんとか、ようやく、本作が9月6日発売ということで、リニューアルしたミッちゃんを皆様にお届けすることができました。
ひとまず完成までこぎつけることができて、ああよかった‥‥!ほっとひと安心です。
自分はゲームボーイアドバンスで育った世代なので、当時ハマった逆転シリーズの移植に関わることができる嬉しさと、「逆転検事」という名作を移植することへのプレッシャーを味わう日々でした。
新しいグラフィックになったミッちゃんも、皆さんが受け入れてくださることを願っています。
さて、開発ブログなど書いたことなどありませんので、何を書けばいいのやら、悩みました。
グラフィックの製作過程や、翻訳関連の紹介は、それぞれを担当された、アートDとローカライズDにお任せするとして‥‥。
開発にあたって、
「御剣セレクション」は過去2作品を移植したタイトルになりますが、本作で初めて検事シリーズに触れるユーザーさんも多いだろうということで、プロデューサーからは
「移植と言えども、ベタ移植ではなく、現在のゲームに見劣りしないようなものにしたい。ストレスに感じる部分は改善して、クリアまで遊んでもらいたい」
というオーダーが届いていました。
つまり、見た目の進化はモチロン、昨今ならあって当たり前の機能も用意しよう、ということです。
そんなわけで、ディレクター兼企画を担当した自分は、「御剣セレクション」の開発にあたり、ニンテンドーDS版/モバイル版から新たに追加された機能や、一新されたUIデザインについて、開発陣のコダワリと併せて紹介してみようかと思います。
まずは、ゲームを起動してすぐに出てくる「タイトル画面」についての紹介です。
タイトル画面
「逆転検事1&2 御剣セレクション」のタイトルロゴと共に、法廷の背景と各種メニューが表示されます。
ここから、タイトル選択で「逆転検事」「逆転検事2」を選ぶと本編が始まるので、「ランチャー(起動)画面」とも呼んでいました。
コダワリ部分として、画面の背景を、セーブしたストーリーの進行度に応じて切り替わるようにしています。
(「大逆転裁判)でも似た機能があって、最後にセーブした地点の3D背景がタイトルに表示される仕組みでした。)
タイトル画面は、「御剣セレクション」から新しく追加された箇所なので、当たり前ですが、「1」、「2」それぞれの本編とは切り離されてるんですよね。
なので、タイトル画面と本編がシンクロするような要素を入れて、少しでも没入感を出したかったのです。
また、同じエピソード内でも、途中でセーブしたら切り替わるところもあるので、色々な所でセーブして見てみると面白いと思います!
(久しぶりに起動した時とか、クリアした後に、タイトル画面でちょっとした変化があるゲームっていいよね‥‥。)
ここで背景に使用されている画像は、本編中の背景マップやイベントカットから流用しています。
しかしそのまま使うのはちょっと味気ないなということで、デザイナーさんがライティングの調整などを行い、見栄え良くしてくれました。
法廷マップの背景はしばらく見ていると、上から差し込む光のようなエフェクトが追加されていたりと、背景ごとにいろいろ手が加えられています。
そして、このタイトル画面。流れているBGMは今回、「御剣セレクション」で新規に製作したものとなります!
BGMについて
タイトル画面で流れるBGM。
曲名は「追究への序曲 ~さらなる真実を求めて」
これがもう、とにかくかっこよくて、「検事1」、「検事2」それぞれの「追究」フレーズがミックスされており、ミッちゃんのクールでありつつも内に秘めた静かな情熱を表したかのような素晴らしいBGMをサウンドチームの方々が用意してくださいました!
「追究」好きとしてはもうたまりません。
タイトルBGMに限らず今回追加されたアレンジBGMはどれも良すぎてなんなら仕事中も無限ループで聴いてました。
サウンドの皆様ありがとうございます!
タイトルBGMは「御剣怜侍 ~異議あり!2009」と「2011」のアレンジも案としてあったのですがこちらは元が「大いなる復活〜御剣怜侍」の派生であり、過去にアレンジも多く作られていたため、今回は「追究」の2曲をベースに製作してもらいました。
それでは次にいきましょう。
本編中に新たに追加された便利な機能をいくつか見ていこうと思います。
様々な便利機能
ストーリーモード
ストーリーモードは、「大逆転裁判1&2」や「逆転裁判456」でも実装していたので、既にご存知の方も多いと思います。謎解きをすべて自動でクリアしてくれる機能ですね。
この機能、とても好評だったとのことで「逆転検事1&2」で実装することになりました。
推理中や、対決パートで煮詰まったときに使うもヨシ、物語を楽しみたいだけのときに使うもヨシ!
実は「逆転検事」では自由にマップを歩き回れる都合上、自動で動くキャラクターの制御が難しく、「捜査パート中にストーリーモードをONにすると、捜査開始地点からやり直す」仕様にしています。
これはコダワリというか、苦労話になってしまうのですが‥‥
開発中、捜査パートの途中でストーリーモードをONにすると、位置によってはカーブを曲がりきれず、「ミッちゃんが机やカドに引っかかって、その場でガタガタ走りつづける」ことがわかりました‥‥。
いわゆるバグってやつが度々発生してしまったのです。
特に、狭いマップだったり、障害となるオブジェクト(机や人物など)が多いと起きやすい。
マップの自動移動は、元々オリジナル版でも想定していない機能のため、プログラマ曰く、内部的な処理もやれることに限界があるとのこと‥‥。
また、バグを取り除くにしてもマップのあらゆる位置にミッちゃんを配置して引っかかるかどうか試すのは現実的にできる作業量ではない‥‥。
開発メンバーで色々と代替案を模索したりしましたが、予算や期間の都合もあり、結局は現在の仕様に落ち着きました。
難しい判断を迫られ、少し心残りになってしまった部分ではありますね。
(ちなみに「大逆転裁判1&2」の開発ブログでも、ディレクター&企画を担当された交合さんの苦労話を読むことができます。そのときも大変だったろうなあ‥‥。)
「調べる」マークと既読機能
捜査中、調査対象に近づいたとき、ミッちゃんからフキダシが出すようにして、調査ポイントがわかりやすくなりました。ニンテンドーDS版やモバイル版では、画面右下にボタンがシュッ!と飛び出ることで、調べることができるかを判別してたんですよね。
今回、フルHD化で大画面でのプレイも想定することになったので、操作対象の近くにフキダシを置いて、視線をできるだけ大きく動かさなくてもプレイできることを意識してます。
また、一度調べた箇所は、既読のチェックマークがつくようにしました。
事件が進行して調べる内容が変化したときは、チェックが外れるようになっています。
「検事」シリーズは、「裁判」シリーズと比較すると、同じ箇所を何度も調べることが多いので、地味ながらも重要な機能ですね!
(同じ箇所を何度も調べる必要があるせいで、既読マークのバグが沢山見つかって苦労したエピソードもありますが、それはまた別の機会に‥‥)
便利機能の話はここまでとして
最後に、ギャラリーについても少し触れてみたいと思います。
ギャラリー
ギャラリーでは勲章、ゲーム内のイベントカットシーンやキャラアニメーションに加え、ニンテンドーDS版開発当時の資料や、オーケストラ含む楽曲の視聴が可能です。
と、その前に‥‥
ギャラリーには本編のネタバレが多く含まれていますので、
未クリアの方は閲覧にご注意ください!いやほんとに!
少し話が逸れますが、ゲーム中、ギャラリー以外にも色々な箇所でネタバレ注意喚起のテキストが出てきます。
10年上前に発売された物語ではありますが、やはり「逆転」シリーズはストーリーや事件のトリックを楽しんでほしいので、先に犯人が分かっちゃうのは避けたかったのです。
煩わしいかもですが、何卒ご容赦を!
ゲーム以外の部分、例えば、ゲームの紹介PVなども、ネタバレにはならないよう注意しながら製作しました。
(まあ、ストーリー冒頭で真犯人がわかる場合はあまり気にせずバンバン出しちゃってます。)
ギャラリートップ
ギャラリー全体のデザインは、手書きの風合いをいれてアンティークな印象にしています。
アール・デコ調にデザインした本編のUIとは、またちょっと違う雰囲気ですね。
これはデザインの方向性を決めるとき、プロデューサーから渡された「逆転検事オーケストラミニアルバム“逆転の旋律”」のジャケットがイメージの元になっています。
キャラ図鑑
本編では一回しかみられないアニメーションも、ここでなら何回も見ることができます。
特に新グラフィック「モダン」で作られたミニキャラ達は、デザイナーさんが頑張ってくれたおかげで、もんのすごいクオリティになってます。(デザイナーのみなさん、ホントありがとうございます‥‥!)
本編では体の一部が見えないキャラクターが、全身を確認できたりと、ここでしか見れない情報もありますのでたくさん眺めてもらえると嬉しいです!
可能な限り本編で登場したキャラクターを載せていますが、一部はアニメーション処理の都合で、どうしても図鑑に載せられなかったものもあります。
パイプをつかんで降りるミッちゃんをギャラリーに載せられなかったのが悔やまれます‥‥。
特別資料
特別資料は、デザイナーの岩元辰郎さんが当時描かれていたラフスケッチのデータから、面白そうなものをチョイスして掲載しています。
コイツ誰!?みたいなヤツがいたり、どんな風にアニメーションするかなどが細かく描かれていたりと、キャラクターが完成するまでに様々な試行錯誤がおこなわれていたことがわかります。
ちょっとしたラクガキが描いてあったり、岩元さんの遊びゴコロが垣間見えるファン必見の資料になってます!
終わりに
ここまで読んでいただきありがとうございます!
まだ沢山お伝えしたいことはあるのですが、文字数がかなり多くなってきたので、一旦このあたりで締めといたします!
15年ぶりに復活した「逆転検事」シリーズですが、今回のリマスターによって、ミッちゃんこと御剣怜侍の新規ファンが増えてくれることを切に願っています。
それではまた!
「逆転検事1&2 御剣セレクション」プロデューサーの西田峻佑と申します。
今回で最終回ということで、最後に私からも手短に書かせていただきます。
2024年は「御剣祭り」にしたい!とこっそり考えていたこともあり、御剣にフォーカスしたコラボをはじめTシャツ等も用意させていただきました。しかしそれ以上にユーザーの皆様からの発売記念ファンアート、愛が凄まじい店舗ディスプレイ、手作りのジオラマの投稿まであったりと、熱度におどろきながら感謝しております。
制作およびプロジェクトにご協力いただいた方、シリーズを支えてくださるユーザーの皆様本当にありがとうございます。ここまで読まれた方々は既にプレイ済みだとは思いますが、「逆転検事」をとことん味わって頂ければ幸いです!