開発ブログ

第 7 回

霧の中のロゴ制作事件

メインプロデューサー 牧野泰之

皆さま、こんにちは。
『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』メインプロデューサーの牧野泰之です。ゲームが発売されて1週間程経ちましたが楽しんでいただけているでしょうか??
さて、前回は『大逆転裁判』や『逆転裁判』に対する思いや考えなどを語らせていただきましたが、今回は本作のために新しく用意する必要があった『1&2』としてのロゴや、海外版『The Great Ace Attorney』のロゴ制作について、少しだけお話しさせていただきますので、しばしお付き合い下さい。

①『大逆転裁判1&2 
-成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』
の日本語版ロゴ制作について

ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、ニンテンドー3DS版の『大逆転裁判2』が出た当時、『大逆転裁判1』とセットになったパッケージ(ソフトが物理的に2枚入ってます)も実は存在していたんですね。今回のパッケージデザインやらロゴやらをどうしようかな?と思い、はじめに頭に浮かんだのが、この3DS版のいわば“旧”『大逆1&2』がそのまんまNintendo Switch/PS4/Steamに出るだけか…という誤解を受けるのは絶対に避けないとアカンな。ということでした。

※3DS版のいわば旧『大逆1&2』パッケージアート

本作は少なくとも高解像度化は絶対やるし、何らかのインゲーム特典だって絶対付けるし、その他調整だって絶対にかける。プロジェクトの起案段階時点で物理的にソフトを2本入れるだけの簡易的プロジェクトではなかったわけです。前回のブログでも書かせていただきましたが、自分にとっては全世界に“改めて『大逆転裁判』を届け直すプロジェクト”という位置づけなんだから、プロデューサーとしては新作のつもりで、もう一度ゼロからマーケティングを頑張るべし!…という意気込みで、ロゴについては色々とバリエーションを出してもらうことにしました。大きな方針としては「原作踏襲案」と「新たな印象づけをする案(≒結構変える案)」の2方向。グラフィックデザインチームから出してもらったデザイン案がこんな感じでした。

※日本語版『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』ロゴデザイン初期案

そして…ディレクターやローカライズディレクターたち本作のコアメンバーやプロモチームの意見も聞きながら、色々と悩んだ挙句に選んだのがこの案。結構思い切ったデザインですね。

※日本語版『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』ロゴデザイン決定案(後日見送り)

「目を引いてもらう為に変わった感を優先するか…」という理由からでした。しばらくはこのロゴデザインで諸々進めていたのですが、ある日、原作のアートディレクター/キャラクターデザイナーで本作パッケージ用の新規イラストの描き下ろしを依頼していた塗さん(塗和也)から、「打合せがしたい」との一報が。何だろう?と思って会議室に入った途端に「あのロゴは一体何!?」ともの凄い勢いでつめ寄られました。3DS版『大逆2』の発売以後(そして1&2の開発が終了した今でも)、ゲーム開発だけでなく数々の仕事をご一緒させていただいてる中で、お叱りを受けたような記憶はほとんどないのですが、この時だけは「変え過ぎ!!!!」と、かなりのお叱りを受けました。ただ、先ほど書いた“3DS版の旧『1&2』と同じには見られたくない”ということや“新作のつもりで社内外を動かすマーケティング活動のきっかけにしたい”といった狙いのお話をすると、「気持ちは分かったから、ちょうど良い着地点を探ってみる」と言っていただけ、ロゴデザインは引き取ってもらいました。その結果が最終的な今のロゴになっています。そのしばらく後にパッケージ用の新規描き下ろしイラストをUPしてもらうことになったのですが、ある意味僕がやりたかったこと(プロデューサーとしての狙い)を描き下ろしイラストでものの見事に実現してくれたわけです。ファンの皆さんも今回のパッケージイラストを見た瞬間、シビれたでしょ?へっぽこマーケター(≒理屈)は凄腕クリエイター(≒感性)に完敗するという絵に描いたような好例です。

※日本語版『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』メインアート

②『The Great Ace Attorney』の
英語版ロゴ制作について

本作は英語版の存在が重要なプロジェクトですから、当然、英語のロゴも用意しなくてはいけない。タイトル名に関してはかなり初期から“Great”でいっちゃうか!とローカライズディレクターと決めていたので、悩むことはありませんでした。サブタイトルについても“Naruhodo”が海外では浸透していないことは分かりきっていたので、ADVENTURESとRESOLVEのみに、これもサクッと決定。それをふまえてグラフィックデザインチームにロゴデザインを発注。与件としては、①Ace Attorneyシリーズであることを伝えたい(≒ナンバリングのロゴ形状に近くてOK) ②ヴィクトリア朝の時代感を伝えたい ③スチームパンク的な要素をうまく入れ込む(②の延長線上として) これぐらいでした。ということであげてもらったデザイン案がこれです。

※左側:英語版『The Great Ace Attorney: Adventures』ロゴデザイン案
※右側:英語版『The Great Ace Attorney 2: Resolve』ロゴデザイン案

『GAA1』と『GAA2』単体のロゴデザインはわりとスムーズに着地していきました。ところが、いわゆる1&2としてのロゴ(英語で言うと『CHRONICLES』としてのロゴ)が、おそろしく難航したんです。。。“百聞は一見に如かず”ということで、初期段階のデザイン案がこちら。初期とはいえこれから迷走しそうだな…というのは伝わると思います。

※英語版『The Great Ace Attorney Chronicles』ロゴデザイン初期案

フォントやタイポグラフィの参考イメージ、ヴィクトリア朝要素の参考イメージ、スチームパンク要素の参考イメージ、これまでの広告宣伝素材のデザインパーツなどをグラフィックデザインチームに共有しつつ、ローカライズディレクターや本作コアメンバーからの細かい修正依頼などを繰り返すこと多数、ようやく今のカタチに落ち着きました。これ、書くとまぁそんなもんでしょ?感は出るんですが、本当につらかったし、長かったんですよ。。。最終的には然るべきところに収まったデザインになったので“終わりよければ全てよし”ということにしておきましょう!

※英語版『The Great Ace Attorney Chronicles』ロゴデザイン決定案

この辺で僕のブログは締めようと思います。2回に渡ってお付き合いいただきありがとうございました。
次回はローカライズディレクターのジャネットが再登板の予定です。なんと‥‥夏目漱石や明治時代について書きたい!と席の後ろで意気込んでおりますので、ぜひお楽しみに。