開発ブログ

第 5 回

舞台裏小話

ディレクター&企画 交合雅一

みなさま、こんにちは!今作「大逆転裁判1&2 ―成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟―」にてディレクター&企画を担当しました交合雅一です。
これまで翻訳、英語ボイス収録、演奏収録についてそれぞれ担当がお話ししてくれたので、僕からはまず今作の新機能「ストーリーモード」についてお話したいと思います。

ストーリーモードについて

今作では元々「ストーリーモード」は存在せず、昨今のアドベンチャーゲームでは標準装備な「オートプレイ」のみが実装予定でした。ただ全く無かったというわけではなく、その前身はデバッグモードとして存在しました。
※デバッグとはゲーム中の不具合を探して修正することです。デバッグモードはそのデバッグを補助する為の機能ですね。

ところが、とある日にプロデューサーから1つの命令が降りてきます。

会話イメージ

「ゲームの新たなウリとなるモノを追加して欲しいのだ。」

ヴォルテックス

「い、今からですか!? ちょっとスケジュールを確認します‥‥」

成歩堂

「あ、開発期間はどれくらい伸ばしてもいいのですか?」

成歩堂

「開発期間は伸びない。」

ヴォルテックス

「え? ‥‥じゃあ人員を増やしてもらえr」

成歩堂

「予算も増えないため人員も増えない。以上だ。貴公の活躍に期待する。」

ヴォルテックス

「‥‥これは難題だぞ。」

成歩堂

※実際はヴォルテックス卿ほど高圧的ではないですよ!

業界、というか仕事をしていればよくある話ですね。
もちろんプロデューサーも嫌がらせをしたいのではなく、各所と協議しどうしても必要となった場合に、こういった案件を開発チームに持ってきます。

さて急遽発生したミッションに対して、ウリになるものとしていくつか案を提出しましたが、何せ期間・予算・人員と何一つ増えませんので、やれる事には限界がありウリになるものの追加は難航してしまいます。

そこでプロデューサーの1人から、デバッグモードとして用意していた自動で進むモードをゲーム中に実装してはどうか?という打診がありました。

会話イメージ

「‥‥確かデバッグモードの1つに自動でゲームを進めるものがあったな。」

ヴォルテックス

「はい。まだ作成はできてないですが、用意する予定ですね。」

成歩堂

「あれを本編に実装するのだ。」

ヴォルテックス

「え? いや、あれはあくまでデバッグモードですし、そんな簡単には‥‥」

成歩堂

「ふむ、ではすぐに確認に取り掛かりたまえ。」

ヴォルテックス

「いや、でも自動的にクリアするモードを実装するなんて‥‥」

成歩堂

「我々には時間も予算もないのだ。使えるものはなんでも使う。」

ヴォルテックス

「しかし!」

成歩堂

「次の会議の時間だ。次回までに確認、そして結果報告をしたまえ。」

ヴォルテックス

「‥‥分かりました。」

成歩堂

※実際はヴォルテックス卿ほど高圧的ではないですよ!

確かにデバッグモードとして「自動で進むモード」は用意していましたが、実際のゲームに実装するには、様々な調整や本当にゲーム本編に実装しても問題ないかを品質管理部にチェックしてもらわないといけません。そこからは、既に動いているスケジュールを調整し、開発内での諸々の確認、品質管理部との相談を重ね、ようやく実装することが可能となりました。

こうして新たなウリとして「ストーリーモード」は、日の目を浴びる事となります。
頑張ってくれた開発メンバーには本当に感謝しかありません。

‥‥もう少し期間や予算、人員のどれかがあれば、直接正解に向かわせるのではなく、ヒント機能として段階を踏ませるようなモノなど様々な可能性も考えられたのですが、こればっかりはどうしようもありませんでしたね。

こぼれ話ではありますが、「ストーリーモード」は元々「オートクリアモード」という名称で実装が進められていました。ただ海外支社より「オートクリアモード」では現地のユーザーから受けが悪いと思われますという意見もあって名称変更依頼がきました。
当初は現在の「ストーリーモード」以外にも、以下のような名称案がありました。

・龍ノ介が一切間違えず事件を解いていく所から「大弁護士モード」
・ユーザーを助けることから「アシストモード」
・ユーザー助けて世界観もあっている「助太刀モード」

上記の案を含むいくつかの案を出した後、プロデューサーと海外支社との協議の結果、みなさまもご存じの「ストーリーモード」となった訳です。
個人的には「大弁護士モード」も好きでしたね。

特別付録について

続いては特別付録について話をしたいと思います。
お気付きの方もいるとは思いますが、名称の元ネタはニンテンドー3DS版にあった電信付録から来ています。
特別付録には電信付録にあったランドストマガジンの一部と特製コスチュームが収録されています。また、それ以外にも勲章や動画、今作のクレジット(所謂スタッフロールですね)も収録されています。

第1回でも画像が上がっていましたね。

勲章

PS4版ではトロフィー、Steam版では実績と同様のものをゲーム内でも確認できるようにしています。Nintendo Switch版には同様の機能が無かった為、せっかく作った内容をSwitchユーザーだけが見られないのはダメだ!という事から全ハードで見られるように、勲章の項目を作成し特別付録に収録しています。
既に大逆転裁判シリーズをプレイした方も、再度プレイして勲章のフルコンプを目指してみて下さい!

今作は複数条件がある場合の進捗も見えますよ!

画廊-設定画

3DS版のランドストマガジンにあった図録の内容をキャラごとにまとめ、単体の絵はその他としてまとめています。また、もともと画像内にあった塗さんの解説もウインドウとして外に出し、より設定画を大きく見やすく調整しています。

上が今作、下が3DSでの画像です。3DSの画像が黄色っぽいのは、
3DSの画面がPCで作成している時よりも青い為、黄色のフィルターが乗せられているようです。

画廊-動画

こちらの項目も開発当初は存在しない項目でした。
ストーリーモードよりも前に起きた案件です。こちらもプロデューサーからの依頼で始まりました。

会話イメージ

「新しくゲームのウリの1つとして、動画作品を収録することとする。」

バンジークス

「え?あぁではスケジュールを確認しますね。」

成歩堂

「よろしく頼む。」

バンジークス

「現状のスケジュールを伸ばす必要が出たら‥‥」

成歩堂

「期間が延びる事はない。また人員の追加もない。貴公の奮闘に期待する。」

バンジークス

「‥‥頑張ります。」

成歩堂

※実際はバンジークス卿ほど高圧的ではないですよ!

こうして仕事は増えていくのです。こちらについてはストーリーモードに比べれば手間は大きくなかったのですが、何せ動画なので今度は容量問題が発生しました。

ゲームの総容量を計算し(開発中なのである程度は予想)、どこまでを動画に割けるかを割り出し、ひたすらギリギリを攻める必要がありました。
せっかく実装するのであれば、少しでも綺麗な動画を見てもらいたいので、解像度の変更をしたり、映像班に協力してもらってビットレートを調整したりして何とか上限ギリギリで動画を実装できる事になったのでした。

座っているお守りキャラたちは、何パターンかあるので色々確認してみて下さいね!

音楽室-楽曲

楽曲の中は「音楽」「その他」「蔵出し楽曲(追加コンテンツ)」と3つのタブで分かれています。「音楽」「蔵出し楽曲(追加コンテンツ)」はBGM系、「その他」はSE系でまとめており、BGM系のみ自動でループ再生します。統一感を出すためにBGM系はループ、SE系は鳴り切りと分けましたが、最初はタブの中でもループするものと鳴り切りするものが混在している状態でした。

‥‥実は統一目的以外にも「蔵出し楽曲(追加コンテンツ)」に収録される「ベーカー街のワルツ」「相棒 ~アレンジVer.」を無限ループで聞きたい!という個人的な希望があったのでループを仕様にしました。どちらも本当にいい曲なので、ループで聞きたい方は早めに予約、購入を検討して下さいね~。

特典「蔵出し設定画」「蔵出し楽曲」

これらも当初想定されておらず、開発も終盤のストーリーモードのやりとり後に起きた案件です。ゲーム制作が当初の予定通りに進むことはかなり稀ですね。

会話イメージ

「予約・購入時の特典を追加したい。貴君もそうは思わないか?」

バンジークス

「今からですか!?そもそも追加コンテンツは予定になかったので、まずはスケジュールを調べないと‥‥」

成歩堂

「ふむ、ではすぐに調査を始めるがいい。」

バンジークス

「あぁもちろん分かっているとは思うが、人員や予算そして期間は増えない。」

バンジークス

「‥‥とりあえず調査します。」

成歩堂

※実際はバンジークス卿ほど高圧的ではないですよ!

2度ある事は3度あるものです。正直このタイミングで!?とは思いましたが、開発内で精査を行い開発側は問題ない事を確認し、さらに塗さんへのコメント依頼とデータ提出依頼の打診、サウンドチームへのコメント依頼とデータ提出依頼の打診を行い、それぞれOKがもらえて初めて特典の開発をスタートできました。

急な指示でしたが、開発チームの尽力と塗さんやサウンドチームの協力により、何とか世に出すことができました。特に塗さんのコメントは、指定していたページ数を限界突破していたので、急遽ページ数を増加させるという対応を行うほどの大ボリュームで翻訳のジャネットさん共々苦笑いが抑えられませんでしたね(笑)。ですので、大ボリュームのコメントをみなさま期待してお待ちください~。

各コメントは既出コメントの再構成+新規コメントの織り交ぜです!

音楽室-音声、更衣室、番外編

こちらも3DS版のランドストマガジンにあった音声、ショート・ショート、特製コスチュームを収録しています。特製コスチュームについては「大逆転1」の方にも対応させたかったのですが、実は1と2では微妙に各キャラのモデルデータが違い、対応させるためのコストが大きすぎたので泣く泣く断念した経緯があります‥‥。

新規衣装案やスコットランドヤード衣装ホームズ、龍太郎の衣装化も一時期案に上がっていましたが、どちらも同じく期間や予算の都合で流れてしまいました‥‥。

この2人は絵面が面白かったのですけどね‥‥

クレジット

今作「大逆転裁判1&2 ―成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟―」に関わったメンバーのクレジットが再生されます。ここで流れるBGMは今作からの新曲「ベーカー街のワルツ Waltz for Chronicles」です!思わず画面を見ずに聞き入ってしまいますね。

クレジット再生中はちゅうのすけ達お守りメンバーと「大逆転裁判」と「大逆転裁判2」の各名場面が表示されます。是非一度はご覧ください!

あれ?表示されている名場面に違和感が‥‥?

本編クリア後のスタッフロールは原作とほぼ同様のものが再生されます。
※ちなみに英語版とは本編スタッフロールの流れ方が違うので、お時間のある方は見比べてみて下さい~

ストーリーモードと特別付録の話だけで結構な文量になってしまいましたね‥‥。
まだまだ舞台裏小話はありますが、今日の所はこの辺で。
僕の回はこれにて終了ですが、まだまだブログは続きますのでお楽しみに!
特にローカライズディレクターのジャネットさんの話は、非常に濃いのでローカライズ等に興味がある方はぜひ読んでみて下さいね!

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!