開発ブログ

第 4 回

音樂制作の冒險と覺悟

コンポーザー 北川保昌

皆さまこんちには!『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』で音楽を担当している北川保昌と申します。この度、Nintendo Switch版/PS4版/Steam版が全世界にリリースされるということで大変嬉しく思っております。

このタイトルにおける音楽の方向性を決めるにあたっては、まず明治という時代背景を考慮し、従来の「逆転裁判」シリーズの音楽とは違ってシンセサイザーなどの電子楽器を想起させる音色は基本的に使用せず(使用したとしてもクラシカルな楽器に馴染むよう配慮する)、当時存在していたであろう楽器をメインに据え、それに「逆転裁判」の音楽的要素(曲調ということよりも、ゲーム音楽としての「機能」面)を踏襲した上で、巧舟ディレクターを始め、コンポーザーの前馬氏・寺山氏と試行錯誤の末に生み出されたものです。

「逆転裁判」シリーズにおけるゲーム音楽としての「機能」とは、一つの音楽である以前に、まず「ゲームの世界観に合う」「プレイヤーを没入させる」というのは大前提として、そこからシリーズならではの「二人が推理しているような曲調か」(共同推理曲)「追いつめるような曲調か」(追求曲)という部分を寸分の狂いなく正確に表現することです。この部分がしっかり嵌らなければ、「大逆転裁判」の音楽としては成立しません。巧ディレクターは特にこの部分に拘り、一切妥協はしませんでした。

そして、キャラクターテーマのほうはまた違った角度から作曲しております。裁判や推理等のシーンは「機能」ということで、楽曲全体の雰囲気が重要視されます。しかしながら、キャラクターテーマは強烈で極端な個性を持つキャラクターたちを如何に端的に表現できるかが勝負となりますので、楽曲全体の雰囲気でそのひととなりを表すだけでは全く濃度が足りません。そのため、キャラクターテーマの多くにその性格にあった特徴的な音色をフィーチャーしました。ホームズは靴のタップ音、アイリスは試験管に落ちる試薬の滴下音、ローザイクは洗濯板と杭を打ち込む音、といったように、個性的な人物像を音に落とし込んでいきました。その楽曲を聴いただけで、どんなキャラクターだったのかをスムーズに思い浮かべることができる、当たり前ではありますが、その一点をストイックに追求して作曲しました。

これらが結実した結果、濃厚で聴き応えのある「大逆転裁判」の音楽世界観が完成し、嬉しいことに既にプレイしていただいているユーザーの皆さまからもご好評をいただいております。本当にありがたいことです。

また、今作用にもいくつか楽曲を制作しているのですが、予約及び早期購入特典として「相棒 ~The game is afoot!」アレンジさせていただきました。ヴァイオリンに壷井彰久さん、アコーディオンに藤野由佳さん(いつも「逆転裁判オーケストラコンサート」で「大逆転裁判」の楽曲を演奏なさっています)を迎え、生演奏が映える熱いアレンジに仕上がっております。本編共々楽しんでいただければ幸いです。

それでは、『大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟-』を(音楽に耳を傾けながら)こころゆくまでお楽しみください!